ここだけのモードスパニッシュを求めて
奈良 レストラン「アコルドゥ」&バル「バホ111」

■心に残る思い出のレストラン
現在、モードスパニッシュレストラン「アコルドゥ」は、奈良公園の一角(水門町)にて営業されています。(2016年12月新装オープン)
以下、2014年3月まで営業されていた奈良・富雄での「アコルドゥ」グルメレポートです。併設のバル「bajo111」で軽く1杯飲んで、ディナーコース(9品)を堪能。ゆったりと味わった美味なる料理の数々をご紹介しますね。
■グルメデータ
レストラン:アコルドゥ(奈良)
訪問日時:2013年11月中旬 ディナータイム
内容:バル「バホ111」でグラスワイン1杯×2人分、レストラン「アコルドゥ」で少なめのディナーコース(7,875円/人)とグラスワイン2杯×2人分
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気軽に立ち寄れるバル「bajo111」

近鉄奈良駅から15分程度電車にのって富雄まで。駅のホームから懐かしい煉瓦造りの洋館が見えました。改札を出て、道路を渡ればすぐです。少し早めに着いたので、2013年6月にオープンしたという、アコルドゥの敷地内にあるバル「バホ111」で軽く飲んで行くことに。昼間はパンの販売、夜17時30分からバルになるようです。
ちなみに「bajo(バホ)」はスペイン語で「下」という意味。「111」は、住所の富雄北1-1-1からきているようなので、アコルドゥの下にあるバルってことでしょうか。

開店して間もないのに、すでにお店には人影がちらほら。店内に入るとスタンディングのカウンターと、テーブルが2つだったか、3つだったか。四角い座面のスツールがいくつか。基本、立ち飲みバルですね。

マンサニージャとホットサングリアをオーダー。どちらも500円。ホットサングリアは、言うなればホットワインですね。炭酸で割ってるわけではなく、シナモンなどのスパイスがきいて、フルーティでほの甘く美味しい。かるくつまめるタパスもありましたが、これからディナーなのでぐっと我慢です。

お店の棚には、昼間のパン販売の続きでしょうか、ハード系のパンが並んでいました。カウンターには、サフランの球根と里芋がオブジェのように置かれていて、なんだかおしゃれ。近所にこんなバルがあったらいいな~というような、素敵なお店でした。
さて、いよいよディナーです。
「アコルドゥ」で9品のショートコース

階段を上って入り口に向かいます。約4年ぶりですが、変わってないな。変わっているといえば、メニューの絵が、発芽した豆のようなシルエットになっていたことかな。以前は口を大きくあけた坊やだったんですよねえ。あ、見方によれば、発芽した豆は大きく口をあけた横顔に見えなくもないか…。

入り口の脇には、薪が置いてありました。暖炉用かな?

相変わらずステンドグラスが素敵です。今回はテラス席ではなく、暖炉のそばのテーブルでした。
ディナーコースは、前菜からデザートまで約11品のクロロフィリア(10,500円)と、9品のアコルドゥ(7,875円)の2種類。で、9品のショートコース「アコルドゥ」にしました。

▲ 酵母の香りの芋 森の香りのインフーション

スープを注いでくれます。キノコの香りが漂って、森のイメージ。

オリーブオイルはオーストラリアのアルベキーナ種、それに発酵バターに塩。

最初は玉ねぎ入りのパン、なくなるとバゲット。どちらも軽くあぶってあって温かく、小麦の香りが立っておいしかったですね。バホ111で販売しているパンでしょうか。

▲ 乾いた海 クロロフィルと磯の香り
きゅうりを海苔でまき、帆立に海ぶどうや海藻を添えたもの。きゅうりのやや青草っぽい匂いが、ここではまるっきり磯の香りに思えるから不思議です。カバを飲みながらいただきました。

▲ 夏の風景 稲穂と巻貝 冷たい水と田の土

これはもう、1枚の絵画を見るような美しさです。ライムのような酸味のある泡と、フェンネルなどのハーブがきいた上品な一皿。
この料理を2皿並べて見て初めてわかるのですが、要素は同じでも、ソースの描き方や泡の位置など少しずつ違っていて、ひとつとして同じではないのです。そのときの、感覚で盛りつけられるのでしょうか。それがまた新鮮で、うっとりしながらいただきました。

▲ デゥラム小麦の手延べそうめん 海老、ピーナツ、コーヒー

ドゥラム小麦で作ったそうめん。三輪そうめんの職人さんの手による極細パスタです。味もそんな感じ。海老はちょうどいい加熱具合で、しっとりぷりぷり。添えられているナッツやコーヒーの粉末をまぶすと、ぐっと味わい深くなるから不思議。コーヒーと海老がこんなに合うなんてね~、新鮮な組み合わせでした。

▲ イサキときゅうり、貝のクリーム フェンネルと青りんご
このイサキの火の入り方も絶妙です。ほんと素晴らしい。きゅうりのソースはわずかなほろ苦さがハーブと合って、上品なイサキの白身を引き締めます。リンゴときゅうりのフレッシュな角切りも味や食感のポイント。この繊細な味わいがたまりません。

▲ 葛城合鴨のアサードと森 紫芋のエッセンスと落ち葉

このタイミングで赤ワイン(テンプラニーリョ)に。
この合鴨が最高においしかった。肉自体は柔らかいのだけれど、しっかりとかみ応えがあって、噛むたびに肉汁がじゅわっとしみ出して、もう赤ワインとのマリアージュ最高~♪ 踊り出したくなるほどの美味しさでした。紫芋のプレートやトリュフを散らした華やかな盛りつけにもテンション上がりました。

▲ スペインのチーズと葛城の八朔ジャム
チーズは羊乳製のイディアサバル。クルミと八朔のジャムが添えられています。これまた赤ワインとぴったり。
続いてデザートです。

▲ 冷たいホエーとミルク コーヒーのアイレとシート

食べる直前にホエーをかけてくれます。はやくしないと溶けてしまいますからね。白いの酸味のあるクリームとコーヒー味の甘いシート。茶色いのはふわふわのコーヒームースです。

▲ メロンソーダ「小宇宙」
駄菓子屋で売ってるようなメロン菓子のケースに入ってでてきました。幼い頃食べた、メロンシャーベットみたいで懐かしい。

アイスクリームかな?と思いつつすくうと、アイスクリームの下にはゼリー、それからごろんと果肉も入っていました。見た目チープで中身は豪華です。

▲ ハーブティ
コーヒー、紅茶、ハーブティとあって、ハーブティをチョイス。フレッシュなハーブ(アップルミント、レモンバーム、ミントなど)に混ざって、今回は特別に白い小さなお茶のお花も入っていました。なんて心憎い演出なんでしょう。

小菓子をつまみながら、この日いただいたお皿を思い返します。海や田んぼや森を感じさせてくれる美しくも繊細なお料理の数々。どれも上品な仕上がりで、味わうごとに味覚や嗅覚が研ぎ澄まされていくような感覚に陥りました。同時に身体のなかから浄化されていくような、きれいになっていくような。錯覚ですけどね。
食事をしたにもかかわらず、上質なフランス映画でも観たような、美術館で絵画でも鑑賞した後のような心地よさ。アコルドゥの世界にゆったりと浸って、お腹も大満足です。ただし、全体の量でいえば、男性のお腹には少なめかもしれませんが。

駐車場に続く素敵な庭の小径を横目に、階段を降りて駅に向かいます。また来たいな。来られるよう頑張らないとね。ごちそうさまでした。
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アコルドゥ(akordu)

奈良市富雄にある現代スペイン料理レストラン。シェフの川島宙氏は、スペイン「ムガリツ」での経験を機に、フレンチからモダンスパニッシュへと転向。2008年6月にアコルドゥ、オープン。同年いきなり「Hanako west」にて2008年度おいしい店グランプリに選ばれる。
2011年「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。地元の食材を用った季節感のあるイノベーティブな料理を提供。アコルドゥならではの記憶を呼び起こし、記憶に残る繊細な味わいを求めて、遠方から訪れるグルマンも多かった。
姉妹店に、2013年6月オープンしたバル「bajo111」(アコルドゥ敷地内)(のちに閉店)、同年7月にバル「ドノスティア」(大阪・ダイビル)がある。
ビルの老朽化に伴い、アコルドゥとバホ111は、2014年3月末をもって、閉店。ドノスティアは続行。2014年12月に姉妹店「abarotz(アバロッツ)」(東生駒)オープン。
2016年12月、奈良・水門町(県庁隣)にウエディングバンケットを備えた新生アコルドゥオープン。
川島氏はレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ ジャポン」が選ぶ2018年度の「今年のシェフ賞」に選ばれる。
■ムガリツ(Mugaritz)
スペイン・バスク地方にあるミシュラン2ツ星だったこともあるレストラン。シェフのアンドーニ・ルイス・アドゥリスは、スペイン料理界の次世代を担うリーダー的存在。英国の「レストランマガジン」による世界のベストレストラン50で、「ムガリッツ」は2013年度は第4位、2015年度は6位、2019年度は7位に選ばれている。
※当レポートの情報は2013年11月のものです。
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