東京・五反田「シェリーミュージアム」

東京・五反田にあるワインバー「シェリーミュージアム」で、シェリー酒とそれにあう料理をいただいてきました。注目の料理は、隠し味にどんぐりのリキュールを使った「豚バラ肉と芋のソテー」です。ご紹介しますね。
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■■■目次■■■
シェリーのことなら…

ワインバー「シェリーミュージアム」は五反田駅から徒歩2分の目黒川沿いにあります。2階なので上を見ていたら通り過ぎ、もう一度引き返して、1階入り口の看板を見つけました。よく見ると木製の板に「Sherry Museum」のロゴマーク。

階段を上がって突き当たりです。隣のお店に入りそうになるので気をつけてくださいね(って、実は入ってしまった!)

この方が館長を務める中瀬さん。以前、銀座「バル・デ・オジャリア」でマスターとしてシェリーの魅力を語ってくれたのが昨日のことのようです(って、2013年のことですが…)
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そのときは、飲み比べによるシェリーの奥深さとタパスの美味しさにうなったわけですが、今回はシェリーと料理です。
「専門はお酒なので期待しないで…」とのことでしたが、いえいえ、シェリーを知り尽くしている方だからこそ、シェリーに合う料理やシェリー使いがわかるんですよね。
では、さっそく…。

わたしはマンサニージャのソーダ割り。

友人はストレートで。

突き出しで出てきたのが、鶏肉とエリンギのマリネ。ベーコンのコクがなじんでうまーい。シェリーも隠し味に使っているのかな?

コースターの絵柄は帆船。シェリーはスペインのヘレスで作られ、船で運ばれてイギリスに…というのを暗示してのチョイスでしょうか。小物ひとつにも意味がありそうで気になってしまいます。
シェリーは葡萄味醂!

以前「サーモン&トラウト」で小笠原味醂「一子相伝」をいただいて、味醂の美味しさ再発見だったのですが、なんと、こちらにもレアもの味醂がありました。
長期熟成 本みりん「越(えつ)」。20年以上も蔵の中で眠っていたものです。ラベルが年月を物語っていますね。
舐めるように少しだけ口に含むと、味醂というか、まさにお米の極甘シェリーです。ペドロヒメネスのような濃さ。

もうひとつ、これは入手しやすい「福光屋の三年熟成 福みりん」。美味しいわ〜。味醂は調味料として使われることが多いけれど、元々味醂はお酒として飲まれていたのですよね。
で、なぜ味醂がここにあるのかと思ったら、シェリー(酒精強化ワイン)と味醂は製法が似ており、研究対象が広がった結果のようです。すなわち、シェリーは葡萄で作る味醂なのだと。ほお、なるほど。
味醂と思えば、料理にもシェリーをバンバン使いたくなりますね。
隠し味のシェリーで極旨に…

まず「かつおとベビー帆立のアヒージョ」。上に載っているのは、イタリアンパセリじゃなくてパクチーです。最初から驚かせてくれます。

なんという組み合わせ!と思ったけど、これがすこぶるマッチしていました。かつおのタタキのように表面のみ焼いて中はレア状態。うまみオイルとパクチーが合うんですね。
ホセ・バラオナ・ビニェスさんの「ajillo! -アヒージョ! - スペイン生まれのアツアツ・タパス」本にも、いろんなアヒージョが出てきますが、この組み合わせはありませんでしたよ。

このお料理に合わせて出してくれたのは、アモンティリャード。まさに、シェリーを知り尽くした男が作るアヒージョなのでした。

そして、干し芋のゴルゴンゾーラチーズ焼き。これがめちゃうま。厚切りの干し芋にシート状になったゴルゴンゾーラチーズをのせて、軽く炙っただけなのに、アモンティリャードに合う合う。
簡単なので、すぐにでも真似したいおつまみです。そう、ここでは手の込んだものというより、組み合わせの妙によってシェリーが美味しく飲める料理を出してくれるのです。

極めつけは「豚バラ肉と芋のソテー」です。豚バラの脂がほどよく落ち、香ばしさが加わり、豚の旨みが芋にからんで、全体が甘じょっぱくまとまっていました。

その旨みを引き出しているのが、どんぐり風味のリキュール酒だとか!(驚)このリキュールも試しに飲ませていただきましたが、ナッツ風味で甘くて美味しい。デザートワインとして1本欲しいくらいでした。

その「豚バラ肉と芋のソテー」には、こんなオロロソを合わせてくれましたよ。

アモンティリャードよりも、ほんの少し甘めでなめらかな口当たりのオロロソ。
「マンサニージャ」「アモンティリャード」「オロロソ」と少しずつタイプの違うシェリーが銘柄別に楽しめるのも「シェリーミュージアム」ならではです。

これは「野菜と豚バラのトマト煮込み」だったかな。料理はどれもシェリーに合うように作られ、相乗効果でどちらもおいしくいただけて、マリアージュ完璧でした。
シェリー談義が面白い

つい料理に関心がいってしまいましたが、ここはシェリー好きが集まるバー。時に現地スペインの生産者の方がいらしたり、販売業者の方がいらしたり。お酒好きにはたまらない空間になっています。
かといって、初心者大歓迎の中瀬さん。シェリーをわかりやすくレクチャーしてくれるので安心です。

カウンターまわりにある小物や器もかわいくて…。知らない隣の方にも「これ灰皿ですって」なんて話しかけたくなる雰囲気です。

こんなお猪口もありました。楽しいですね。
「シェリーミュージアム」は10人も入ればいっぱいになるこじんまりとした隠れ家的な店。これが妙に落ち着くんですよ。シェリーとおつまみ料理が気になったら、ブログなどでお店の営業日を確認してお出かけになってみてくださいね。イベントもよく開催されています。
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お料理メモ
ティオぺぺ(フィノ)とペドロヒメネスは料理やお菓子に使ったことがありますが、オロロソはないので、今度ぜひ1本加えたいと思いましたね。肉料理に使いたい。
あと、作りたいのが干し芋のゴルゴンゾーラチーズ焼き。さつま芋の凝縮された旨みと青カビチーズの旨みが相まって、美味しさぎゅっぎゅっなんです。
まとめると「オロロソをおろそかにするな」「サツマイモを攻略せよ」ってことかな。(←ちょっと違う…)
中瀬航也(なかせこうや)さん
シェリー酒専門家・欧州嗜好文化史研究家。日本シェリー界の第一人者。銀座「バル・デ・オジャリア」を経て、2014年5月、五反田にワインバー「Sherry Museum」をオープン。その傍ら、べネンシアドールの実技指導や、セミナー、講演、執筆活動などシェリー普及のために幅広く活躍されている。
著書に 「シェリー酒 知られざるスペイン・ワイン」、「Sherry - Unfolding the Mystery of Wine Culture」がある。
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